hyla’s blog

はてなふっかーつ!

「ぼくらの」


 せっかくの正月というのに、右手が使えないのでものすごく不自由。ということで、家でアニメの一気見という、滅多にできない怠惰を楽しんだ。

 そういう中で、今回思わず見つけてよかったのが「ぼくらの」というアニメ。
テレビアニメ『ぼくらの』DVD Vol.1

 アニメは2007年制作で、元になった鬼頭莫宏の漫画は2004〜2009年まで『月刊IKKI』(小学館)で連載されているらしい。コミックスは2010年の、第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しているとのこと。
 さすがにこの辺の漫画は全く把握していないので、知らなかった。



 ストーリーは、夏休みの自然学校で訪れた海岸で、少年少女15人はココペリと名乗る男性にあう。ココペリに「ゲームをしてみないか?」と誘われ参加を了承するが、単なるゲームと思っていたのにそれはゲームなどではなく、少年達は現実にロボットに乗り込み、地球に来る敵ロボットと戦うことになる。パイロットとして、ロボットを操縦するのは、一度に一人。しかし、操縦者は戦いの後、死んでしまう運命にある。敵とは何なのか。そして、なぜ戦わねばならないのか…。


 という話。



 SF的な設定もまずまず良い感じだし、何より印象的なのは、一人一人が戦う事を決意するまでの葛藤が非常によく描かれていること。両親がなく、おじさんの所でアルバイトしつつ一人で妹や弟の面倒を見る少年がいると思えば、研究にしか興味のない母の元で孤独を抱えながらひょうひょう生きる少年がいる。臓器移植でしか助からない病を抱えた親友に自分の臓器を、と言い残して戦う少年も居れば、恐ろしさから自暴自棄になる少年も居る。


 私が印象に残ったのは、本田 千鶴という少女の話。チズは、中学の男性教師に恋心を持っており、教師の口車に乗せられて性的関係を持つ。しかし、それを隠し撮りされインターネット上に流されてしまうそして、パイロットに選ばれてしまったチズはロボットを操り、復讐に向かう…。
 

 これだけでも重い話だけど、それよりもっと悲しかったのは、家族との会話だ。両親や姉はごく普通でのんびりと穏やかで常識的。けれど、彼等はチズの話を聞いていない。「私立中学を受験したい」と相談しても「受験までしなくても」と、取り合わないまま穏やかな会話が続く。話を聞いてもらえないチズのいらだちや悲しさ、孤独がつらい。そして、わかってもらえないというその孤独感こそが、騙されることに繋がっていくのだ。
 私たちは忙しいし、いつだっていろんな事を抱えている。でも、それでも子供には、きちんと向き合わなければならない。本田家は、ごく普通のどこにでもあるような家庭だからこそ、そのことが印象的だった。



 他の子供達の物語も、決して明るくはないけれど、心情がよくわかり共感出来る。
 

 設定やロボットの造形もなかなかよく出来ているし、面白かった。





 こう言うのを見ると、漫画も読みたくなるけど、さすがにこれ以上本が増えるのはなあ…。
 こういうとき、漫画喫茶で読めれば…と思うけど、ここにはそんな物があるわけもない。


 かなしーな〜。