ハチは盛りに
雨が降った。夏と言えば、とにかく乾燥する香川県で、この時期雨が降るのは珍しい。バタバタと降る白い雨を眺めてぼーっとした。そして雨の雫が消えた頃、網を持って近くの河口へ行った。河口にはハマゴウが咲いている。雨が降っているときにはハチは活動しない。けれどその分、雨が上がればハチは一気に活動し始めるのだ。
河口はちょうど干潮で、潮の引いた砂の上を歩くと、ハクセンシオマネキが驚いて穴の中に隠れる。じっと立ち止まって見ていると、また穴の中から白いハサミをもたげながら顔を出す。それに、あちこちから「カチっ、カチっ。」と音がしていて、これはテッポウエビ。石の間には、何者かに食べられたテッポウエビの断片も見えた。
そして、ハマゴウを見ると、先日に比べても随分たくさんの花が咲いている。今がちょうど盛りだろう。そして、そんなハマゴウの間を、たくさんのハチが飛び交っている。高い音を立てて飛び回るキヌゲハキリバチ。それから、キムネクマバチは相変わらず不器用そうに花に止まっては、盗蜜を繰り返している。そして、トモンハナバチが一気に増えている。
1週間前に見た時には、時間帯のせいもあってか、トモンハナバチは1匹しか見なかった。けれど、今日はトモンハナバチが至るところで飛んでいる。私の胸ほどもある背の高いハマゴウの茂みでは、ぱっと見ただけでも10匹はいただろう。緩やかに飛び、花に止まっては吸蜜を繰り返す。あるいは、互いに追いかけ合う。見ていると、ある個体がいきなり花に止まって吸蜜する個体にぶつかるように飛んできた。そしてそのまましがみつき、始めたのは交尾。雄も繁殖がかかっているから、必死だ。
そんな中で、ふと見慣れない黒いハキリバチに気づいた。キヌゲハキリバチの毛がすれてなくなったもの?と思ってみたけど、何だかやはり違う。となれば確保!持って帰ってよく見て見れば、こんなハチだった。
黒い体に白い筋。それに、羽根が黒っぽい。ハキリバチに違いないけど、キヌゲハキリバチではなくて、どうやらネジロハキリバチのようだ。ネジロとは「根白」のことだろうか?真っ黒の体に、腹部と胸部の間の白い帯がよく目立つから、割と覚え易いハチだ。けれど、ネジロハキリバチを見たのは、初めてだ。
ネジロハキリバチは、ハキリバチのくせに葉を切らず、枯れ木の隙間などに松ヤニなんかの樹脂をつかって巣を作るのだそうだ。ここには、洪水の時に流されてきた流木がそのままに残っている。近くには松原もあるからそこの松ヤニを使って、流木や竹の中に巣を作っているのだろう。
実際、地面にあったこんな竹にハキリバチが入っていくのを見た。
流木には、ハチだけでなく、ニジゴミムシダマシなんかも入っている。ペットボトルやプラスチック・ビニールゴミは片付けて欲しいけれど、海藻や流木といった自然のものは、そのままにしておくことも大事だよね。