hyla’s blog

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リリイ はちみつ色の夏

 図書館で借りた。とても読みやすくてさわやかに終わる作品。1960年代のまだ黒人差別がとても露骨だった時代のアメリカの話。

 

リリィ、はちみつ色の夏

リリィ、はちみつ色の夏

 
 母親はおらず虐待気味の父親の元で育った少女が、黒人の家政婦と共に家出し、たどり着いた養蜂家の黒人姉妹の元で自分自身を肯定し、自分の偏見に気づき、自分を愛してくれる人を見つけてその人々との間で絆を作っていくというお話。


 読後感はよいのよ。読みやすいし、どっかこうツボに入るところがある。個人的には、パーティでそれぞれが隣り合う人にケーキを食べさせるというシーンが印象的だった。自分がとって自分が食べるのではなく、自分が隣り合う相手に食べさせることは、おそらく信頼のやりとりなんだろう。さらに、そういうパーティに象徴される人と人のつながり方。

 そういうシーンは、昔みたアメリカの上質の古いドラマを彷彿とさせる。NHKの少年少女ドラマシリーズで、放映されていたアメリカやイギリスのドラマの、乾いた風とセピア色した空間。ジュブナイルだけど、それだけにまっすぐに伝えるものがあって、いささかクサさはあるものの、それはそれで好きだった。


 でも、少女が主人公で、その視点からだけで物語は進むので、この作品自体ジュブナイルといえるけど、ジュブナイルとして評価するならよい作品といえるけど、大人の読むものとしてはどうなんだろう。家出していきなり死んだ母の関係者の家にたどり着くし、そこで受け入れてもらえるし、そこで新たな人間関係を作っていけるなんてのは、ちょっとご都合主義的。


 けれど、この作品は、たとえば日本人が「ALWAY 三丁目の夕日」の物語に涙するように、人と人の繋がりが今より濃密で、だからこそそれが人を支えていた時代を思い出させるから、そして、やはりそれはなくなってほしくはないものだから、こういうのもたまにはアリなんだろう、と思います。