hyla’s blog

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月魚


「風が強く吹いている」はさくさく読みやすかった。と言うことで、図書館にあった同じ作者になる本を、もう一冊借りてみた。

 
  

月魚 (角川文庫)

月魚 (角川文庫)

 


 で、これは何というか耽美派


 戦後の30年代の話なんだけど、主人公は2人の20代の若者。古本屋「無窮堂」の店主真志喜(男)とその友人で同じく卸の瀬名垣(男)。彼等は子供の頃からの知り合いで、かついささか複雑な事情を持ちつつ、でもこれってこれって惹かれあってますよね。つか、どう読んでもこれって恋人同士。なので、まあそういう系です。


 繊細な線の細い美しい着物の男子真志喜と、明るく闊達な人好きのする男子瀬名垣という設定はいかにもで、そこはかとないBL風味と時代がかった描写はそれなりに魅力的。(昭和30年代に毎日が着流しの若者って変じゃない?って気はするし、「姑獲鳥の夏」の二番煎と言えないこともないけど。)

 
 でも、結局二人の関係、あるいは二人の間のわだかまりというのは、あれだけで解決なのかなあ。そそもそも、BLな関係に進むあたりで逡巡があるでしょうに。それは全くスルっとOKで、お父さんをを見下げ追い出す形になったと言うことだけが解決してめでたしめでたしというのはやや詰めが甘いと思う。


 耽美派BLならそれはそれで、その路線を突き詰めればよろしい。そうではなく、一線を踏み越えないけれど・・・、ってんなら物語の焦点をもう少し明確にして欲しいような。そう言う点で、やや中途半端な印象の残る作品でした。まあ、でも作者は楽しんで書いてたんだろうな。