本を読む
何となく世の中変わってきたよな、というのは日々感じるところではあるので、ついついこんな本を買った。
- 作者: 香山リカ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/04/19
- メディア: 新書
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誰しも感じているであろうそのあたりを「劣化」という言葉でマイナスの変化だと認めよ、というのがこの本の主張。企業の不祥事の多発とかモンスターペアレントの出現とかの世の中全体のモラルの低下などは誰しも共感するだろうし、政治だってそのあたりをしばしば声高く主張している。
でこの原因ついて著者はの主張をまとめるとこんな感じ。
劣化は新自由主義から必然的にもたらされたもので、それを止めるにはまず「今起きている日本人の変化を「進化」などとむりやりに良いように考えるのではなくまずマイナス方向の変化、すなわち「劣化」と認識せよ。そして、自制心を働かせ矜持を持ってより上を目指すべきだ。更に、「劣化」は最終的に損という事を広く知らせて、少なくとも劣化させてはならないところ、最低どのあたりは死守すべき処なのかと言うことを考えて行くべき。
本の7割は「劣化」の実例に占められていて、「劣化」の原因や対策についての記述は少ない。なので読みやすい。けれど、これこそ新書のレベルの劣化そのものではないのか、と意地悪くつっこみを入れたくなった。意地悪ついでに、読み終わってから昔の講談社現代新書を1冊取り出してみた。比較してみると昔のクリーム色の表紙の頃(個人的にはこっちの方が好き)に比べて随分1ページの字数が減ったし、1冊のページ数も少ない。あっさりと読めるけど・・・・。
でも本当に重要なのは「なぜ劣化がおき、それをどうとらえ対策するべきなのか?」という点だろう。「劣化」としてあげられている現象は、目新しい事でなく認知されている事ばかりだ。社会の隅々にまでこの「劣化」は広がっている事を強調したかったのだと思うけれど、こうした現象に興味を、あるいは危機感を持っている人間はそれに対する分析こそ知りたいのではないか。この点について言えば、恐らくはまだ著者の中でもきちんと整理されていないのだろう。特に柄谷行人の論文についての解説はわかりにくく、消化されていない気がした。
多分そのあたりは著者自身も自覚していると思うのだけど、それでも本として書いてしまうというのは危機感の表れなのかもしれない。
個人的には、本の中で「「劣化」が損であるという根拠」としてあげられている利他性の経済学―支援が必然となる時代へという本がちょっとおもしろそうと思った。しかしハードカバーだし場所とるし、経済学の本なんぞ完全に専門外なわけで、買っても読まんだろうなあ、と思うあたりで既に私も「劣化」しているのかしらん?
と言うことで、「劣化」してしまいたくはないと思う私としては、この夏は積ん読状態に成っている本を少しは片付けようかな〜。