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 これを読んだ。
 

バビロニア・ウェーブ

バビロニア・ウェーブ


 適当に買った一冊で、私としては珍しいハードSF。どうしようか?と思いつつ、2.3ページ見ていけそうだったので買ってみた。

 

 で、最後まで読んでみて、悪くないなあと思う。とんでもなくぶっ飛んだ宇宙空間を貫くバビロニアウェーブという存在や、その力を利用した移動方法を読んでいるとイメージできる。登場人物が少ないのにもかかわらず、最後にはそのほとんどが死んでしまう、という見事に救いのない物語展開なのに、それでも読後感は悪くない。それっていうのは、登場人物達がそれぞれに「何とかしてバビロニアウェーブの謎を明らかにしたい。」「宇宙へメッセージを送りたい。」といった思いを実現させるために行動し、死んで行くからだろう。

 

 普通こういう展開では、確かに一部の人間は失敗して死んでいったりするけれど、全員が死ぬなんて思わない。だのに、好感を持てる人物達が、あっけらかんと死んでいくのだ。だからこそ、謎に満ちた存在の大きさが迫ってくる。そして、主人公がそうした謎にまっすぐに取り組む科学者ではなく、単に移送を行う人物であり、宇宙という空間で生まれ育った人物であるあたりがよくできている。主人公は第三者として、謎に挑みいとも簡単に死んでいく科学者達のその姿を見ることで、その思いを引き継いでいく事になる。そうした主人公の心情と読者の心情は共通のものだから、同じスタンスで宇宙空間に漂うバラバラの断片になってしまった科学者達の思いを受け止める。

 
 そして主人公が遙か彼方に謎を求めて出立する最後で、どれほど困難であってもそれでもなお淡淡と謎に挑もうとする前向きな希望が感じられるのかもしれない。


 


 実のところ、これを読んだのは2週間くらい前で、感想を書こう書こうと思いつつ放置。その間に細かな処は忘れてしまったのだけど、けれど最後に博士がバビロニアウェーブに入って行き、そして消えてしまう瞬間。そしてその後に残る小さな断片。そうしたイメージは残っている。そして、淡淡とした悲しさと、同時に「諦めない」という思い。


 で、やっぱりそういう風に残るものがあるって事は、良い作品ではないかな、と思う。




 
 ハードSFってこれまではあんまり手を出さなかったのだけど、食わず嫌いはよくない、と思ったのでありました。