hyla’s blog

はてなふっかーつ!

本を読む

 図書館で本を借りた。
 これ。

 

海の底

海の底


 聞いたことのない作者だったけど、まあテンポ良く話は進む。SFパニック物になるかな。よくあるように、だんだん未曾有の聞きが襲ってくる気配が濃厚に漂ってくるとかいうものではなく、いきなり危機は初めの数ページで姿を現しちゃっている。このテンポ感はあれだ、映画の「スピード」と似ている。

 
 2人の若いはみ出し物の自衛官(片方は色男タイプで口も上手く、他方はいかつくて口べた。)が、予測だにしなかった恐ろしい敵から子供達を助ける。その子供の中には、高校生の女の子も混ざってたりする。一方警察、機動隊はつぎつぎに倒れながら、何とか敵を打ち崩そうとする。初めのうちは如何ともし難い恐るべき敵、と思われた物も自衛隊が重火器を使うなり、ばったばったと倒されていくんだよね。


 うーん。こう女性が書いた作品らしく、さっぱりとした感じもあって読後感も悪くはない。主人公の2人を含む機動隊や、警察で頑張る人々の姿も良く書けている。また、ワガママこの上ない子供達が変わっていく様もそれなり。
 


 が、ねえ・・・・。肝心の危機の正体がどうも今ひとつ。



 実は危機というのが、深海に生息する小さなザリガニが採集される最中に浅海にばらまかれ、それが栄養豊富な条件で巨大化しつつ社会性と高い学習能力を備え、数万匹に増えてある日陸上に上がって人を襲うわけだ。

 いやその、ザリガニ何かの甲殻類を含む節足動物は、外骨格性の動物だから、空気中ではその重さに絶えられるだけの大きさ(最大でも1m以下)にしかなり得ないだよね。鉄パイプで殴っても死なないような3mにもなるようなザリガニだと、相当分厚い外骨格を持っているはずで、絶対重くて深海以外では動けない。それに、ザリガニは浅海で増えるって、数万匹になるまで何を食べていたわけだろう。数万匹の集団になるまでに、海の生態系に異変をきたしているだろうから、そっから気づくよな。それに、大型の甲殻類でも、幼生は極めてもろい(動物プランクトンだ)ので、海の中では餌になってしまうような・・。
 それにそもそも深海にシロウリガイやチューブワームの住むような所で化学合成細菌の作り出す栄養に依存していたような生物が、どうして人間を襲うのか?更に言えば、社会性のザリガニって・・・。

 それと、まあ話の展開上敵は倒さないといけないんだろうけど、数年というまさに瞬時に進化した貴重な生物を殺したりしていいのか・・・。WWFが、レッドデータが・・・。


 とまあ、いろいろけちをつけることは可能。でもまあ、後書きで著者も言っているように、「楽しんで大風呂敷を広げた作品」なわけで、昔よく見たB級映画の生物が凶暴化して襲ってくるタイプのSFパニックもの、的感覚で読むものだな。「ありえんし・・・。」と思いながらも、その映像を楽しむべし。


 ということで、「スピード」感のある「巨大生物SFパニック」を読みたい人にはオススメ。(個人的には星3つ。娯楽作品だものね。)