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ビジョルドの新作を読む

 

遺伝子の使命 (創元SF文庫)

遺伝子の使命 (創元SF文庫)

 
 本屋で「遺伝子の使命」を買う。ビジョルドの新作。この本は特に賞を得てはいないが、さすがにビジョルドらしく軽快に話が進む。
 男だけの惑星で培養卵巣と人工子宮を用いて生殖を続ける惑星で培養卵巣が老化してしまった。そこで卵巣を他から買い入れようとするが・・・って話。
 女だけの惑星、という話はよくあるが、男だけの惑星というのはあまり聞いた事がない。そこが新鮮なのだろうけど、でも男だけの惑星が出来なければならない必然性が弱いし、それが一時的に成立したとしても、生物の本能って根強いし、生殖欲とかからすぐに破綻しそうに思う。
 
 ビジョルドの作品を読むとついつい60年代から70年代のSFの感じを連想する。「銀河市民」とかの印象と良く似ている。あのころのSFって物語の舞台が宇宙になっただけで、主人公達の考え方とか、感情の持ちようは人間そのものだった。けれど、科学や宇宙に関する知見が増えるに従って「想像もつかないような未来」とか「想像もつかない異様な生物」「想像もつかない感覚」を書かねばならなくなり、結果、読む人の感情移入が出来ない作品ばかりになっていったように思う。
 
 ビジョルドの作品は、人間は人間で、その辺りが弱さだけど、物語としては感情移入しやすい読みやすい作品で、ついつい読んでしまう。この作品もそれ。まずは読みやすく面白い。けど、いくら何でも「君は優秀で素晴らしいから、卵巣をください。」なんて要求は私なら断るなあ。それも憎からず思っている相手からなら特にね。個人的に評価するなら5段階の4というところか。