「うまげ」に関する考察
スーパーに、買い物に行った。威勢のいいかけ声と、「今日は買いまっせ!」みたいな雰囲気でついついいらない物まで買ってしまった。
で、これ。そう「うまげなパン屋さん」のパン。それも豆パンである。作っているのはもちろん香川県の高松に近い町のパン屋さんである。
方言丸出しな店の名前とか、キャッチフレーズというのは、ままある。例えば以前高松市のそれも中心部のガソリンスタンドには、大きく「がいなガソリン」と書いてあった。「がいな=すごい(すごく良い)」という意味であるが、G音である「が」が2度も出てくると、なんだか強そうな気がするし、インパクトという点でも、優れていた。
で、これは「うまげな」パン屋さんである。
香川県外の人のために説明をしておくと、「〜げ(気)」とは「〜のような、と思われる」の意味で、形容詞である。「うまい」とは「美味い」なわけで、「うまげな」とはしかるに「美味しいと思われる」パン屋さんである。どうでしょう。「美味しいと思われる」って、思われるだけでホントは?と思いません?
そう、「うまげに」という言葉は単に「美味しそうな」の意味以外に「物事を上手にやっている様子」とかを表す場合もある。が、大切なのは「見た目には巧くやっているようだ(が本当はどうだかわかんない。もしくはホントはそうではない)」という意味(特に言外の意味が大事)を持つって事!
使用例を示してみよう。
「何しょんな?何がでっきょんなあ?」
(何してるんですか?何をつくっているのですか?)
「クリスマスやけん、ケーキつくっりょんでだ〜。」
(クリスマスだから、ケーキを作っているんです。)
「ほーなあ、うまげにでっきょるでないだ〜。」
(そうなんですか。上手そうにできてますね。)
わかりますね。そう、例えばです。兄弟がいて、妹がせっせと本を見ながら、台所で頑張ってたりするわけですよ。そして、にーちゃんが茶々を入れる。
で、ついでに、にーちゃんが勝手に試食して
「何かだあ、これちょい甘さがないんちゃうん?」
(何か、これちょっと、甘さが少ないのではないですか?)
「あー、にーちゃん勝手に食べた〜!にーちゃんや、もう好かんわ!」
(あら、お兄さん。勝手に食べたのですね。お兄さんなんて、嫌いです。)
「けどだあ、ちょいあんたも食べてみーまい。これ、どう思う?」
(けれど、少しあなたも食べてみてください。これをどう思いますか?)
「・・・・。あ、ここにまだ砂糖残っとった。」
(・・・・・。あ、砂糖がまだここに残ってました。)
と、こういうシチュエーション(すいません。長くて)に使う言葉だったする。そう、「うまげな」とはまさしく
「よさそうな(けどホントはちがうんじゃない?)」というニュアンスの言葉。
で「うまげなパン屋さん」のパンを見ながら、この名前、この辺の意味をふまえて冗談でつけたのか、本気なのかついつい考えこんでしまい、買っちゃいました。まあ、そんな事を考えて買ってしまう人間がいることも、お見通しであったのかもしれません。
ちなみに、「うまげなパン屋さん」の豆パンは美味しゅうございました。
注:上の例文は完全なフィクションです。(仮によく似た人物がいたとしても、あるいは身に覚えのある人がいたとしても)実在の人物のものではないことを、お断りしておきます。