暑い最中に山に行く
9月になってもやっぱり暑い。あまりにも暑いし、家にこもってごぞごぞとしていたのだけど、せっかくの休みだしちょっとは出かけてみようと突如思い立った。
で、着替えて冷やしたお茶のペットボトルと双眼鏡をデイパックに突っ込んで向かった先はいつもの里山。普段からよく登っているとはいえ、山に来るのは主に寒い季節だ。10月〜5月は来るが、暑くて草が茂って蛇や虫の多い暑い最中に来るのはバカだ。なので、当然誰一人いない。そんな夏の山を一人とぼとぼ登った。これまでは一人と言っても、いつもマルクと一緒だった。けれど、我が家のマルクは17才で、さすがに最近は足腰が弱って家の中でも時々こけたりするようになっているし、多分登り切れないだろう。だから今回は、ほんとに一人だけだ。誰もいない山で、一人気兼ねなしにゆっくりゆっくり登る。
藪からは「ちいー、ちいー」と柔らかな声が幾度も聞こえて、そっと覗くとメジロの群れだった。杉の木の中からは「ヒーヨ、ヒーヨ」と大きな声がして、こちらはヒヨドリ。「チッチッ」と警戒音を出していたのは、ウグイスだ。それに加えてミンミンゼミの声とツクツクホオシの声が至るところから聞こえてくる。
暑いのは暑いけれど、さすがに木の下は涼しい風が通り抜ける。換羽の時期だから、道には鳥の羽が時々落ちていて、ヒヨドリの尾羽や山鳥の羽、それにカラスの風切り羽なんかを拾いながらとぼとぼ登ること1時間5分。ぜーぜー息を切らしながら何とか頂上についた。
頂上の祠に参って、小さな山小屋に入ってみると、地面一面に小さな穴が空いていて、蟻地獄だらけ。ついつい子供みたいにアリを捕ってきて、穴の中に落とし入れてみた。逃げようとするアリを、蟻地獄が砂を跳ね散らかしながら捕らえるのをじっと眺めてみた。
それから、地面に落ちていたミサゴの羽を拾って下山した。
下り道は楽だけど、一方で滑りやすい。注意しながら下るのだけど、アブがしつこくつきまとう。おまけにまたまたメジロの群れと、ヤマガラの群れがやってきてすぐ目の前で虫を探し始めた。そんな光景を見ながら歩いていたら、岩の上の小石に足をとられて思いっきり尻餅をついた。怪我こそしなかったものの、本気で痛かった。きっとおしりには蒙古斑のような青あざができてしまうだろう。いい年をした大人のやるこっちゃないわなあ、と思ってたら雨も降り出し、それからは双眼鏡を片付けて両手をつかいながらゆっくりと降りて、2時間半で家についた。
「暑かったけど、まあ鳥がたくさん見られたし、羽もたくさん拾えたらいっかあ〜。」
と思いながらシャワーを浴びて服を着替えて、脱いだ服を洗濯して気がついた。
着ていたパンツのおしりが10?以上破れてるではないか〜!
・・・・・・。
誰もいなくて良かったよなあ。
こんだけ破れるなんて、本気で怪我しなくて良かったよなあ。
うん、あたしはラッキーな人間だ。ほんとに運が良い!
と言うことにしておこう。