hyla’s blog

はてなふっかーつ!

シャネルより欲しいもの


 ちょっと引っかかるところがあって、「行動生態学(蒼樹書房 定価6.500円)」という本を探していた。ところが、どう探しても品切れ、絶版中。ユーズドでないかと思って探すと、これが、

 1万5000円なのだな。


 
 またかよ・・・。


 
 このところ、私が必要に迫られて探す本は、どれもこれも品切れでユーズドはバカ高くて、ホント嫌になってしまうのだけど、いろいろ調べる内に、少なくとも上記の本がこれほど高くなった訳が何となく理解できた。この本の出版元である蒼樹書房という出版社が、実は2004年の3月に廃業していたのだ。


 この蒼樹書房という出版社は、生物系の割と良い本を出していて、私も何冊かは買ったことがある。買った本の間には、出版社の図書目録が挟み込まれていて、眺めているうちにあれもこれもちょっと欲しいかも・・・・と思った事を覚えている。そして、思いつつ買わなかった事を今になって激しく後悔。



 にしても、どうしてそういう事になったのだろう。蒼樹書房の出す本は、渋い本が多かったけれど、本当に良い本がたくさんあったし、生物学の教科書として非常に有名な本の翻訳も数多く出版していた。だから、大学の先生のつくっている生物系の学生向けのおすすめ本リストには、たいてい蒼樹書房の本が多少は入っている。けれど、絶版だと既に持っている人は良いけれど、これからこつこつと勉強しようなんて殊勝なことを考える学生さんはもはや入手不可能か、大枚はたいてユーズドを買わなければいけないわけで、それって非常に困った事ではないだろうか。確かにあまり大量に売れる本は出していなかったけれど、こういうしっかりした本を出す出版社がなくなってしまったのというのは、何かすごく残念。


 生物系でいうと、このほかにも「保育社」という図鑑で有名な出版社があるけれど、ここも一度倒産とか言っていたし、「思索社」という出版社もいつの間にか「新思索社」になっていたということは、あんまり嬉しくはない事情があったのだろう。


 最近は、情報は何でもまずインターネットで検索になってしまって、学生のレポートでも、インターネットのテキストをそのままコピペして終わりなんてことも多いらしい。まず図書館に行って本を探して、その本の参考文献から更に本を探すなんていう作業は、古風でしかないのだろう。むろん、そういう現在の若者の能力が昔に比べて低くなったとか言うのではなく、インターネットなどのツールを使いこなす能力や、ブログなんぞを通じて自己表現する力ははるかに高いと思う。けれど、昔に比べて本を探す、本を読む、本を買う学生は減っているのではないだろうか。そして、流通経路の変化などもあるだろうけれど、もしかしてそうした事が、地味ではあってもしっかりした仕事をしていた出版社が持ちこたえられなくなる一つの要因になっているのだとしたら、それは残念でたまらない。

 
 良質の本は、文化だし、財産だと思う。一度にたくさんは売れなくても、その本があることは非常に重要であると思う。


 

 


 



 ともあれ、「ないとなると更に欲しい・・・・。」のが、人情というもの。



 
 1万5000円かあ・・・・・・。